音楽雑記帳

おじさんアマチュア演奏家の研究ノート

サザンのBメロはいつ始まったのか

現代のJ-POPでは「Aメロ・Bメロ・サビ」という形式(楽式)が一般的ですが、これはいつからこうなったのだろうかと考えています。平成になった頃かなと漠然と思っていたのですが、 松田聖子赤いスイートピー」 (1982年・昭和57年)にすでにBメロがあることに気づきました。またユーミンの「守ってあげたい」(1981年・昭和56年)が今日の典型的な「Aメロ・Bメロ・サビ形式」であることを確認しました。今回はサザンオールスターズについて調べてみたいと思います。

というのは、サザンの曲は「ザ・Bメロ」だと、ぼくは個人的に思ってるのです。ときどき休止期間をはさみながら現在も活動しているサザンですが、ヒットを連発した1990年代、Bメロからサビへとつながる流れが魅力的な曲ばかりだったと思っています。
2000年からさかのぼっていくと、

TSUNAMI」2000年・平成12年
Aメロ:風に戸惑う、弱気なぼく・・・
Aメロ②:止めど流る、さやき水よ・・・
Bメロ:人は誰も、愛求めて・・・
サビ:見つめ合うと、素直に、おしゃべり出来ない・・・

愛の言霊」1996年・平成8年
サビ始まり:生まれくセリフとは、蒼き星の挿話・・・
Aメロ:宴はヤーレンソーラン、呑めどワッチャッチャ・・・
Bメロ:童っぱらっぱ、忘れ得ぬ・・・
サビ:生まれくセリフとは、蒼き星の挿話・・・


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エロティカ・セブン」1993年・平成5年
Aメロ:夢のなかみは風まかせ・・・
Aメロ②:惚れたはれたの真ん中で・・・
Bメロ:恋人どうしだから飲む・・・
サビ:抱きしめて私は私、喉がカラカラ・・・

真夏の果実」1990年・平成2年
Aメロ:涙があふれる、悲しい季節は・・・
Aメロ②:泣きたい気持ちは、言葉に出来ない・・・
Bメロ:こらえきれなくて、ため息ばかり・・・
サビ:四六時中も好きと言って・・・


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さまざまなタイプの曲を作り歌いヒットを飛ばす 桑田佳祐サザンオールスターズ ですが、楽式(形式)は「Aメロ・Bメロ・サビ」を踏襲しています。

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ですけども、初期の曲はBメロがないのです。デビュー曲の「勝手にシンドバッド」はもうアイデアをふんだんに詰め込んだ曲で、つぎからつぎへといろんなメロディが飛び出す玉手箱みたいな作品ですが、コミックバンドではないという実力を見せつけた初期の大ヒット曲は、

いとしのエリー」1979年・昭和54年
Aメロ:泣かしたこともある、冷たくしてもなお・・・
Aメロ②:二人がもしもさめて、目を見りゃつれなくて・・・
サビ:笑ってもっとbaby、無邪気にon my mind・・・

と、「Aメロ・サビ形式」というか「リフレイン形式」の2部形式なのです。

アルバム収録曲で、高田みづえ がカバーした、「私はピアノ」(1980年・昭和55年)はリフレイン形式でもない「1番、2番・・・」という歌謡曲スタイルの形式です。

いったい桑田サザンはいつからBメロを作り始めたのでしょうか??

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ウィキペディアでサザンのディスコグラフィーを眺めて(初期のシングルはあまりヒットしなかった曲もあるので)まずまずのヒット曲をYoutubeで聴いて調べてみました。最初の「Aメロ・Bメロ・サビ」形式のヒット曲はこれではないでしょうか?

チャコの海岸物語」1982年・昭和57年
イントロ:抱きしめたい
Aメロ:海岸で若い二人が、恋をする物語・・・
Bメロ:恋は、南の島へとんだ・・・
サビ:心から好きだよ、チャコ・・・


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昭和歌謡グループサウンズのパロディのような遊び心満載の曲ですが、この曲はかなりヒットしました。お遊びの歌としてではなくホントのヒット曲として売れたんですね。前述の「私はピアノ」も似たようなテイストですが、形式そのものも昭和歌謡的でした。その2年後にJ-POP的な「Aメロ・Bメロ・サビ」のスタイルで発表されたのがこの「チャコ」のように思います。

同時期に湘南モチーフの歌謡曲的な歌があります。アルバム収録曲で 研ナオコ がカバーしてヒットした「夏をあきらめて」です。これはちょっと変わった形式です。

「夏をあきらめて」1982年・昭和57年
Aメロ:波音が響けば、雨雲が近づく・・・
Bメロ:きっと誰かが恋にやぶれ・・・
A’メロ:胸もとが揺れたら、しずくが砂に舞い・・・
Cメロ:Darlin, Can't you see?・・・

「A-B-A」の形式に3番目のメロディをくっつけたような構成になっています。A’メロとしましたが、さいしょのAメロはBメロに連なる「続く感じ」、A’メロは「終止感」があります。そこにサビのようなCメロが続きます。
「A-B-A’-C」で1番、2番・・・とつづいていくところは歌謡曲的な構成ともいえるでしょう。


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「Aメロ・Bメロ・サビ」ではないのですが、興味深い形式を採用しているシングル曲がありました。

「C調言葉に御用心」1979年・昭和54年
A:いつもいつもあんたに迷惑かける・・・
A’:今宵ふたりで翔んだつもりで・・・
B:たまにゃ makin' love、そうでなきゃ・・・

A:胸をつかみうなじを・・・
A’:恋をすればするだけ・・・
B:たまにゃ makin' love、そうでなきゃ・・・

C:あ、チョイと、C調言葉にだまされ・・・

<間奏 ~ A-A'-B-C >

D:砂の浜辺でナニするわけじゃないの・・・

C:あ、チョイと、C調言葉にだまされ・・・


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この曲は「A-A'-B」でもう完結してるのですね、このBメロはサビにつなぐ部分ではなくて、リフレイン部分(Aーサビ形式のサビ)として完成されていると思います。そして、さらにそれに歌のタイトルである「C調」が歌われるCメロがサビのように登場して、入れ子構造のような形式になっています。そしてさらにさらに、こんにちのJ-POPで大サビといわれるようなDメロもさしこまれます。
ひじょうに凝った、複雑な構成になっていながら、サラッと聴き進めてしまうという、なんとも魅力的な作品です。

70年代末から80年代初めにかけて、いろいろな形式を試行錯誤しながら作曲して、1982年・昭和57年の「チャコの海岸物語」でサザンオールスターズの「Aメロ・Bメロ・サビ」形式が完成したのかなあと思ってしまいました。
(つづく)